社長インタビュー(1)

Top Interview

まもなく創業80年、社名を「人の森」に変えて6年。
1年前は、「DNA BOOK」で、人の森に集う人のDNAとは何かを問いかけてきた、加藤政徳社長。
そして新たに「BeとDoのシゴト」という働き方の問い直しである。
次々に社員を巻き込んでの取り組み。
その真意はどこにあるのだろうか。
「Be」があって、やるべきシゴト「Do」が決まる。
社会に必要とされる存在である続けることで、人を幸せにする。
そこから出てくる答えは、現在の人の森の事業がすでに多様性に満ちているように、常識や既成のレールにはないものになるはずである。


Masanori Kato
代表取締役 加藤政徳


【今回、BeとDoのシゴトという視点。加えて部署名まで変えられた。取り組んだ理由をお聞かせください。】

今までの仕事のやり方は、「する=Do」が中心で、それだと、発想がそれまでやってきたことの延長線でしかなかった。売ること買っていただくことによって、どんな社会を創りたいのか。そういう「ある=Be」の視点に立つと、今まで思いつかなかったような発想ができるんじゃないか。そこが理由のひとつです。
もうひとつは、組織のタテ割り意識の壁。従来の職務名だと、名前に縛られて自分の仕事域を限定的に捉えがちになる。これが、たとえば「総務」が「人の幸せを支える部」になったら、落ちているゴミを拾うことを含めて、その場で自分にできることは何でもやる。そういう考え方になりますよね。

Beの視点から発想する。タテ割り意識を無くす。


仕事が社会の必要とつながっていないと、儲けさえすればいいになる。

【このことで、これから社の皆さんにどんな変化が起きるとお考えですか。】

新しい部署名になると、数字の追求だけではなく、自分たちは世の中に対してどんな存在でいなくちゃならないかを意識して、新しいシゴトを考えていくことになる。それは誰かに与えられるものではなくて、現場現場で、社会とのつながりの中から出てきたものを自分たちで引き出し、考え、どのように取り組んでいくか、なんですね。そうすると、働き方というか、過ごし方が当然変わってきます。
やはり、仕事が社会の必要とつながっていないと、儲けさえすればいいじゃないかという働き方になってしまいますよね。
これまで100あった市場が40に減った。その状況でシェアの取り合い競争のために安売りをしたり、働く環境が悪くなったりするのでは、ビジネスの本来の姿じゃない。そんなことをするよりも、「今、困ってる人たちのために、もっと世の中に必要とされることを見つけてやっていこうよ」ということを、自分たちの現場で考えた方がいい。


【特に華厳工場。あそこまでこだわった緑化も素晴らしいですが、細部にいたるデザインの配慮には驚いています。】

『DNA BOOK』もそうなんですが、いくらいいことを書いてあっても、それが読む人の気持ちにストンと落ちるには、読んでもらうための工夫、デザインの力が必要です。
重機をラッピングしたのもそうです。見た目がきれいになると、扱う人が「荒っぽい使い方をしてはいけない」「汚れたらきれいにしなくちゃ」、そういう思いになっていくんです。
工場も50年近く経つと、足元が壊れそうになっていても、「こんなもんだよな」で、誰も直そうとは思わない。重機から始まって現場オフィスとか、すべてにきれいを通していくと、その異常な状態に気づくようになる。道具を大切に扱い、片付けもしっかりし、危険な所もなくなっていく。美しくなると人の心理が変わってゆくんです。

気持ちにストンと落ちるには、デザインの力が必要です。


働いている姿にフォーカスを当てて、視覚化していきたい

【華厳工場は、取り組みが全国へ波及していく一種の実験場かもしれませんね。】

現場オフィスに働いている人の写真パネルを掲げています。カッコいい姿をパネルにすると、自分の仕事に誇りが持てるんです。いくら社会のためにいいことをしていると口で言っても、目に見えるものがないと実感が持てない。これからも働いている姿にどんどんフォーカスを当てて視覚化いきたいと思っています。
華厳工場は世界でいちばん美しい採石工場を目指していますが、会社の中だけで満足していても広がっていきません。やはり外の人に来て見てもらい、いい所があれば真似してもらいたいですね。現場の人にも、オレたちがやっていることが日本の採石工場を素晴らしくしていくことになるんだと、意識してもらえば、さらにやりがいも出てくるんではないでしょうか。


【採石は、昔からある業態。近未来のイメージをお聞かせください。】

ビルやインフラ構造物が造られていく限り、採石は必要とされる。その意味では当分先まで続く業態です。
採石工場でこれから目指したいのは、教室ですね。たとえば、安全教室。何をすると危険なことになるのか……重機が倒れる実験とか、ベルトコンベアに巻き込まれる実験とか。外から研修を受け入れて、日本の採石工場から事故をなくしていきたい。
子どもたちには、森の緑や水の働きとか、生き物と自然、また地層の教室もできると思います。

採石工場以外のビジョンはどうでしょうか。】

施設ものは、どの場所にもつくれるわけではありません。農業だと日本中どこにでも持っていける。このままでは世界の食糧が足りなくなっていくわけですから、農業の可能性は大きいと思います。社会のニーズから考えると、高齢化、自宅介護、健康といった問題。これらはほんとに深刻です。社会に私たちがどういう手を差し伸べられるか。真剣に考えていく必要があります。他には水問題もあります。これから公共水道が民営化されていった時に、資金的に民間でやっていけるのか、水質は?安定供給は?……何もかもまかせて安心というわけにはいかないと思います。

これからの採石工場で目指したいのは、教室。

 

 

 


世界水準のデザインセンスを知ることから始めよう。

【これから教育や人事などで、力を入れていきたいことは?】

デザイン感覚やクリエイティブセンスを身につけることに力を入れようと思っています。東京に追いつこうじゃなくて、世界水準はどこにあるのかと。世界先端との格差を知ることからはじめないと、発想は変わらない。それが単に役に立つかどうかではなく、使う人にとって存在する意味があるかどうか。「こういうのが欲しかったんだ!」と言われるような、人の気持ちを揺さぶる性能やデザイン。そこに開発者のイノチを懸けるものがないと魂が入っていきません。売れない心配をするより、売れる理由を突き詰めていかないと、新しい分野を切り開いていくことはできません。


【毎年新しい人材が入ってきます。これから必要な人材についてお聞かせください。】

大事なのは、人の森を貫くDNAです。関係する方々や地域などと一緒になって歩んでいかなければ、一社では社会なんて変えられないという思い。一緒に歩んでいくには、まずは当たり前のことが誰よりも当たり前にできなければならない。ゴミが落ちていれば拾う。挨拶は心を込めて行う。自分の靴だけでなく、人の脱いだ靴を揃えたり、何かをしていただいたら感謝の気持ちの御礼状を書く。人の責任にせず、愚痴は言わない。やるべきことを陰日向なくできて、初めて信頼していただけるスタートラインに立てる。その上で、ひとつだけでもいいから、この分野だったらあの人だねと言ってもらえる専門性を磨くこと。人間性を信頼され、その上にスキルを信頼されると、絶対的な信頼関係が生まれます。人は、誰かに頼ってもらえることが、いちばんうれしい。社員一人一人がそんな幸せな立場になってほしいですね。このようなDNAのもとに、地域に住んでいる人、ホームページを見た人、みんながいい会社だねと言ってくれる。そういう存在にならないといけないと思います。

誰かに頼ってもらえる幸せ。そのために、人間性を磨き、専門性を磨く。

後編へつづく