人の森


生命
 いのち

自分自身だけでは完結できないように

つくられているらしい

花も

めしべとおしべが揃っているだけでは

不充分で

虫や風が訪れて

めしべとおしべを仲立ちする

生命は

その中に欠如を抱き

それを他者から満たしてもらうのだ

世界は多分

他者の総和

しかし

互いに

欠如を満たすなどとは

知りもせず

知らされもせず

ばらまかれている者同士

無関心でいられる間柄

ときに

うとましく思うことさえも許されている間柄

そのように

世界がゆるやかに構成されているのは

なぜ?

花が咲いている

すぐ近くまで

虻の姿をした他者が

光をまとって飛んできている

私も あるとき

誰かのための虻だったろう

あなたも あるとき

私のための風だったかもしれない

人の森という物語

森は、やすらぎである。

その静けさにおいて。生命を育む包容力において。

森は、目覚めである。

いつかどこかで新しい生命が生まれ、

生命の連鎖が起きている。

森は、ゆりかごである。

途切れることのない可能性のゆりかご。

終わりのない物語。

私たちは森に生かされている。

土、石、水、緑、大気……地中、地表、空中にあるすべて。

息するものが森の恵みを忘れると苦しくなる。

私たちは、企業として問いかける。

森がするように生命をやさしく育んでいるだろうか。

この瞬間を「未来」につなぐために、

新しい、創造する力に、いつも目覚めているだろうか。

人は森に生まれた。人もまた森である。

私たちは、可変性のゆりかごでありたいと思う。

どこまで連鎖し、深く広く、無辺。

「人の森」が紡ぐのは、世界の幸、人の幸。

その終わりのない物語。


吉野 弘 詩人(自称/雑文業)/1926年・山形県酒田市の生まれ。2014年没

「一度は死んだはずの命を人のために役立てたい」と終戦後、21歳の吉野さんは詩人になることを決意しました。吉野さんの詩には、平和への想いだけでなく、人間という弱い存在を受け止める、いい意味での諦念や、他者に対するやさしさなどを感じ取ることができます。

人の森 株式会社と新社名が決定し、ロゴマークが開発されたとき、この詩がまるで人の森を語っているような気がして、本人に承諾を得て使わせていただきました。素晴らしい詩が沢山あるので是非読んでみてください。